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美容福祉の視点からジェロントロジーを考える

2010/5/19更新

美容はジェロントロジーの重要な対象

 ジェロントロジー(Gerontology)とは、高齢化によるさまざまな変化、問題を解決するため、医学・心理学・生物学・経済学・社会学などを統合した学問。社会の福祉のあり方を追求する課程で、「心身ともに健康で、より良い高齢期を過ごすにはどうしたら良いか」を普遍的なテーマにしている。

 一般社団法人 日本美容福祉学会(山野正義理事長)は美容もジェロントロジーの重要な対象という視点から、新宿区の山野ホールに382人の受講者を集め、第9回学術集会・特別公開講座を開催(2009年10月24日)。美容業界では以前から「化粧療法」「化粧心理学」等の言葉が存在したが、ジェロントロジーを美容福祉の視点からアプローチしたのは初の試みであり、美容はジェロントロジーの重要な対象であることを証明した講座になった。(後援/厚生労働省、文部科学省、他)

 山野理事長は、冒頭「日本におけるジェロントロジー研究の先駆けとなると自負しております」とあいさつ。


デビソン教授をはじめ講演をつとめた4人による討論

 プログラムは、ジェラルド・C・デビソン南カリフォルニア大学教授の基調講演「ジェロントロジーの現在と、未来」、辻哲夫東京大学高齢社会総合研究機構教授の「日本におけるジェロントロジーの発展」、阿部恒之東北大学院文学研究科准教授の「美しいこと、老いること〜美容の心理学」、野澤桂子山野美容芸術短期大学美容福祉学科教授の「高齢化社会における美容の役割」の各講演と討論が行われた。

講演で語られた美容とジェントロジーの未来

 デビソン教授の基調講演「ジェロントロジーの現在と、未来」では、ジェロントロジーは生涯発達研究で老人に焦点をあてない・老年医学を意味しない領域を超えた学問であることを説明し、同学部の使命として「人の生涯にわたる発達の基礎にあるメカニズムを解明する研究と教育の指導。健康加齢を促進」と、教育プログラム、並びに、生物人口統計学、社会学、認知心理学といった横断的な教授陣で構成されている特長を紹介。結論としては、1・将来必要とされる人材の育成、2・制度、機関の改革、3・全ての市民や政府機関の連携をアピールした。

 辻教授の「日本におけるジェロントロジーの発展」では、「高齢化は経済発展の成果」としながらも、日本では30年に後期高齢者が2千万人に達し、超高齢化社会になることから、同機構の取り組みとして、1・住み慣れた地域で安心して老いることのできる社会を目指す、2・高齢者政策(治療から予防、デイサービスなどの包括的地域ケアの確立、生きがいを持つ)等を示し、「美容福祉は大きな可能性を持っている」とし、美容は生きがいのある生活の基本的な要素で、「化粧療法」「化粧心理学」というように医学系に位置づけられているが、生活系の分野にも期待でき、ジェロントロジーの目指す方向とも見事に一致する点を示した。

 阿部教授の「美しいこと、老いること~美容の心理学」では、健康を犠牲にして美を求める等の化粧=虚栄・虚飾といった負のイメージから「癒し」「励み」に変化し、年齢層ごとに感じる加齢美へと変化していった、「美」対「健康」の歴史から語り、化粧療法による統合失調症、うつ病の改善例を交え、化粧する心を「自己満足・自己本意ではなく、社会の視点に立っての自分の形への気づかい」とまとめた。

 トリを飾った野澤教授の「高齢化社会…」は、高齢者を取り巻く美容環境の事例を紹介しながら、何らかの病的状態が出現しても、個人として元気でバランスのとれた状態のエイジングを目指した場合、認知症高齢者に対する化粧療法の研究は多いが、健康高齢者に対する研究は少ないものの、ノウハウは蓄積されており、今後は研究結果・成果と実践・活動が連携し、システム、商品、人材育成、学問の構築を進める方向を提案した。

学問の領域を超えて美容は最後のピースに

 この後の討論では、デビソン教授が、化粧療法のシチュエーションから、男性への効果を懸念する意見が出された。辻教授は「男性は年をとってから社会性が低い。女性は心配ないが、男性は仕事を辞めた後、地域でどういう役割を持つか」。阿部教授は「男性は公の仕事の時はシャキッとするが…仕事を持つこと」。野澤教授は「ガン患者で抜けた髪の毛を数えるのは男性」と、女性とは同じではないが、ヘアケア、スキンケアで対応可能なことを示唆した。

 領域を超えた学問という認識は南カリフォルニア大学、東京大学も同様だが、共に「美容」はカテゴリーに組み込まれていなかっただけに、ジェロントロジーの最後のピースになりそうだ。

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