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なぜ繁盛店はいつもお客さまがいっぱいなのでしょうか (前編)

ここのサロンにあって、他のサロンにはないもの

 あるサロンのオーナーさんにお願いして、スタッフたちと同じ制服を着て(たまたまオーナーもメタボサイズで私と予備の制服がピッタリ合ったので)、控室近辺で仕事のじゃまにならない場所に待機させていただいた時のお話しです。

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 そのサロンは10人規模で20坪位の大きさです。目的は「このサロンはどうして流行るんだろう」をみることです。スタッフたちは勉強会で数回顔を合わせていますから、仕事の合間に日頃の疑問点など質問に来ますが、タオル洗いを手伝ったり、ペーパー伸ばしを手伝ったりして、40数年前のインターン時代を思いださせてくれました。そして、時間がたって分かってきたことがたくさんありました。

 ここのサロンにあって、他のサロンにはないものです。そのいくつかを記載します。

底抜けに明るいあいさつがサロン全体を明るくします

  「おはようございます」「こんにちは」。これがあいさつの基本です。大声ではありませんが、お客さまに充分伝わる声と元気な笑顔で「おはようございます」と声をかけられたお客さまは、必ず「おはようございます」を笑顔で返します。これが会話の始まりです。

 あいさつはサロンで最初のお客さまとの良い人間関係を作る会話の基本なのです。そして、この後は、お客さまと人間関係を深めるために、フロントまでの短い距離を有効に使います。

 「○○さま、お荷物をお持ちしましょう」「今日はゆっくりできますか」「ここへ来店するまで何事もなかったですか」「これからどこへおでかけですか」などなど。お客さまの立場で来店の主旨をそれとなくうかがいます。そして、時間に余裕があると分かると、いつものお茶やコーヒーが出されます。「一休みしてから始めましょうね」「この前のパーマの具合はいかがでしたか」「そうですか、今日はもっときれいになりましょうね」

 このおもてなしにあってお客さまは(このサロンまで来てよかった)(さあ、これからオシャレを楽しむぞ)と新たな期待に胸を膨らませることができます。一息ついたところで仕事です。

  フロントでは「お待ちいたしておりました。○○さまですね。会員カードをお持ちでしたらお預かりいたします。ご貴重品はフロント横の小さなロッカーにおしまいください。ご予約のスタイリストは○○ですね。それではご案内いたします」。お客さまはサロンのリズムにのるだけ。回りのスタッフがテキパキと案内します。

「いらっしゃいませ」は鏡の前で心を込めて

  「いらっしゃいませ」は鏡の前で担当者が45度のお辞儀でお迎えします。「いらっしゃいませ」と入口で言われても、「いらっしゃいました」と応えるお客さまはいません。「いらっしゃいませ」はあいさつではないからです。あいさつとはお互いに「あなたを心からお迎えします。決して敵意は持ちません。仲良く楽しい時間をもとうではありませんか」の合図です。

 心から来店を感謝するならば、お客さまが鏡の前に腰かけ、落ち着いたときにお礼の言葉を言えば良いのです。やさしい笑顔、暖かい眼差しでの感謝の言葉は胸にジーンとくるものです。

まずはお客さまの声を傾聴して

  「いつもご来店くださいまして、ありがとうございます。前回のカットに何かご不満はありましたでしょうか。パーマとの具合は問題がございませんか」。お客さまは「そういえば、襟足のここだけ上手くいかないの。それとシャンプーした後、なにかきしむのよ。そのくらいかな」

 カルテをとりながら「襟足のこの部分がカールしないんですね。それとシャンプー後にきしむんですね。分かりました。今日はそこに注意してカットとパーマをいたします。それと、とても長持ちするトリートメントがあるんですよ。お試しください。また、途中で気にかかったことがございましたら、おっしゃってください」

 お客さまから「ご不満」「お困り」「お悩み」をうかがい、その問題解決を図るのが美容師の仕事です。原因はお客さまとの会話からしか知ることができません。

 「鏡の前にお客が座れば、似あう髪型がピタリとできる」というサロンにお客さまは入ってきません。どんなに良い腕があっても、例え世界チャンピオンでも駄目は駄目。流行るサロンにはなりません。「お客さまがどう満足するか」、そこが問題です。まずはお客さまの声を傾聴してください。

会話の少ない美容師からはなんの情報も入らない

  ここのサロンは鏡の前で、お客さまがスタイリストと最初から最後まで、にこやかに話しながら施術が進みます。

 「ここのカットはこのようにレザーで裏から切っていますから、シャンプーした後にコームスルーすると内巻きになります。そうそう、朝スタイルを作るときにも、ブラシを内側から入れるとスンナリ内巻きになります」「このように、ロッドを毛先から一巻き半してパーマをかければ、もっと内巻きが楽に作れます」「すすいだだけでも髪が内側に入りますよね。これででき上がりです。朝、楽ですよ。襟足の部分だけ下がることは、今度はないと思いますよ。もし上手くいかないようならば、すぐお知らせください。手直しいたします。それに今度は髪がサラサラしたでしょう。今のきしむトリートメントが使い終わりましたら、この商品に換えてくださいね」

 よく鏡の前で、お客さまが食い入るように週刊誌を読んでいるサロンを見かけます。そこの美容師は自分のことしか考えてないのでしょうね。お客さまが出す注文だけ適当に施術する。あとは知らぬ顔。これではお客さまはサロンへ行っても楽しくないでしょう。会話の少ない美容師からはなんの情報も入ってきませんから。

ヘアケアの知識が信頼にホームケアもアドバイス

  「最近、髪の毛が薄くなったとおっしゃるのですが、『私は血行が良くないの』と、お仕事で髪をまとめるときに、きつく縛るからだと思いますが、先生、診ていただけませんか?」

 マイクロスコープを覗いていたスタイリストからオーナーに依頼がありました。そのお客さまの年齢は30歳前後、髪を長く伸ばしています。

 オーナーは「頭皮の色が良くないですね。煙草を吸いますね。それと夜遅くまで飲み歩いたりしませんか。昼間は頭の上で髪をきつく結わえてポニーテールみたいにしてますよね」
 お客さまは「ダンスの練習の時に毎日髪を縛ります。それから煙草は駄目ですか?」
 「髪は意外にデリケートですから、血液の循環が悪いと頭皮も髪も発育に影響がでます。サイドをご覧になると分かりますが、普通1つの毛穴から3、4本の毛髪が生えているでしょう。トップは無理に縛っていますから、ご覧のように1〜2本で、その1本も細くて短いでしょう。それに日頃のシャンプーが完全ではないので、毛幹部にたくさん皮膚片が付いていますね」とオーナー。
 「シャンプーは2回とも良く洗っているんですが、それでもこんなに落ちていないんですね…」と、お客さま。

 オーナーは「もっと頭皮を絞るように洗うんですよ。うちの○○はヘッドスパの名手ですから、今日はシャンプーとトリートメントの後で、もう一度診てみましょう。今後どのようにお手入れするかは、お帰りまでに『お手入れカード』にまとめておきます」
 こうした応対に、お客さまは納得した様子でした。

 繁盛店は無類に明るい。スタッフの顔が明るい。お客さまの顔が明るい。照明が柔らかくやさしい。応対が訓練されている。新人が入ると、お客さまにつけるまでロールプレイングで言葉づかい、笑顔、あいさつ。おじぎ、返事、立ち居振る舞いが訓練される。

 美容の技術は無論ですが、お客さまの受け入れ側としての姿勢を大事にしている。これはオーナーの理念・信条がサロンを構成する全員に浸透していないとできません。「オーナーは後ろ姿で見せるのだ」と誰かが言っていましたが、それではスタッフに伝わりません。毎日の教育、お客さまとの接触で、できる機会教育を意識して行なうことが、優秀なスタッフを育てる方法だと思います。
 今回の体験入店は私にとっても再勉強になりました。(後編に続く)

文/菊島延佶(オフィス キクシマ)

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