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なぜ繁盛店はいつもお客さまがいっぱいなのでしょうか(後編)

心を癒す、鏡面の一輪挿しサービス

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 このサロンのオーナーさんには二つの願いがあります。一つはお客さまに幸せになっていただきたい。もう一つはスタッフも幸せになってもらいたい。それが自分の生きがいだと。

 サロンの入口には大きな盛り花が飾られています。毎週、花屋さんが生け替えるそうです。そして、鏡面ごとにも一輪挿しのかわいい花が飾られています。花がお客さまを優しい気分にさせます。また、随所には観葉植物が置いてあり、爽やかな空気と可憐な雰囲気に心が癒されます。

 この生花のサービスが、幸せムードの美容への入口です。お客さまの期待も弾みます。今回もこのサロンが心がけている、お客さまサービスをいくつかご紹介します。

BGMを上手く利用しサロンを快適空間に

  朝はクラシック、昼から夕方はボサノバや少しアップテンポの曲。バックミュージック(BGM)の担当者が決まっていて、お客さまの年代や仕事のテンポに合わせてBGMを変えています。

 これはスタッフ教育の中に音楽心理学の勉強会があり、リズムに乗って仕事をするスタッフもお客さまも、とても快適に過ごせて能率が上がるそうです。ウイークデーと稼ぎ時の土日では、当然選曲が異なります。「有線放送とCDを使い、音楽の利用の仕方で売上に貢献できるのはすばらしいですね」とは、店長のお話です。

  パーマの1液、2液、ヘアカラーの放置時間にノートを持って、お客さまと談笑しているスタッフがいました。これは「眠いから寝かせて」「雑誌が読みたいから…」とおっしゃるお客さま以外は、これから仕事につく新人が、お客さまに慣れるために、お話の相手を務める教育システムの一環だそうです。

 後でノートを見せてもらいましたら、キンピラゴボウの作り方や、洗濯の際の醤油のシミの取り方などの、自炊生活のノウハウが書かれていました。彼女はお客さまを母親に見立ててアドバイスを受けていたようです。お客さまも「この前のキンピラゴボウ作ってみた?」から会話に入れて、「私、ヘッドスパの仕事の許可が出ました」。「じゃあ今度やってみて。予約するから」—など。自然に仕事につながるそうです。

 お客さまの中にはこの時間を楽しみに来店される中高年も多く、「最近の若者の会話の意味が知りたい」とか、「こういう場合、今の人たちはどう思うの?」など会話が弾むことで、お客さまと良い人間関係が築けて、早く仕事につけるそうです。

シャンプー、トリートメント等の量り売りも好評

  お客さまがビニール袋から容器を出して、何やらスタッフと話しています。スタッフは控室に入って、しばらくしてから出て来ました。ここではシャンプー、トリートメント、コンディショナーの量り売りが大好評だそうです。

 プロが使う営業用のおすそ分けです。容器に合わせて販売します。オーナーの話では営業用の仕入れ値の倍で売るから、スタッフに2割バックするとのこと。「プロが選んだものは、スーパーやコンビニで買うものより髪に良いからと好評」だと、ヘッドスパ担当の美容師が言っていました。

  店内の数カ所に「かつら下取りセール」の日程がPOPで告知されていました。そういえば、お帰りのお客さまに説明しながら手渡しているチラシがあります。ロング、ミディアム、ショート用全かつら、トップ用の部分かつら、ショートヘアのバックにつけてロングヘアに見せるかつら等。

 「古いもの、色が気にいらなくて使っていないかつらを、新しいかつらに換えませんか」という企画です。毎月2日間行なう企画で、かつらメーカーからインストラクターが派遣され、古いかつらが下取りされ、お気に入りのかつらが販売されます。エコブームも手伝い、この企画は老若男女に好評だそうです。

 特にトップに使う部分ピースはテレビ宣伝が行きわたっているので、中高年に好評だそうです。サロンに置いてあるサンプルを試しに使い、購入するお客さまも多いそうです。「ハサミやバリカンの販売も、子どもカットキャンペーンで好評ですよ」との男性美容師の声も聞きました。

  お客さまが幸せになるなら、また喜んでくださるなら、そして便利な美容室になるなら何でもやるという、オーナーの新サービスはメガネのクリーニングです。

メガネの洗浄器を導入し顧客サービスに利用

 よくメガネ屋の店頭サービスで使われている機械をご存知の方もおられると思いますが、このサロンにはそれがあり、メガネを2つ、3つ持ってこられるお客さまもおり、施術している間に持参したメガネはきれいになります。

 「自分がメガネを使うからよく分かるんだけど、メガネについた皮脂の汚れはなかなか落ちにくいから、これはお客さまも喜ぶんじゃないかと思ってやりました。成功ですね」と。

 メガネを持ち歩かないお客さまのために、老眼鏡は各種の度数が揃えてあります。クリーナーできれいにしてからお貸ししていますから、これも好評だそうです。

 「サービスとは奉仕・させていただくという心が、美容師には必要だ」と主任スタイリストは胸を張って、私に話してくれました。

痛いヘッドスパ体験、勉強の材料はたくさんある

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  店長から聞いた話です。都心のサロンがどんな技術をしているのか、気になって休みを利用して某有名サロンにヘッドスパ&ブローに行きましたが、シャンプーをしている時に耳の後ろや襟足に担当者の爪が当たって痛いので「痛い、痛い」と言ったら、その女性美容師の態度がだんだん邪険になって、突然シャンプー台の上で、他の美容師に「換わってくれる」と言って、「失礼します」でも「換わります」でもなく黙って手が止まりました。

 担当が換わりましたが、この人も爪を伸ばしていたらしく、痛さは同じ。「痛い、痛い」と言ったら、「うちではこれしかできませんから」と言って、リンスもトリートメントもなくお終いにされたそうです。

 あまりしゃくにさわったので「あんた、シャンプーをするなら爪くらい切りなさいよ」と言ったら、「うちはこれでいいんです」とタオルで拭き取り、冷たい目で、「ブローする? 自分で乾かす?」ですと。(あんた美容師でしょ。うるさい嫌な客)という感じだったそうです。

 結局、ドライヤーとブラシを借りて自分で乾かし、「おいくら?」と言ったら、「いりません!」だって。今までこんなに頭にきたことはなかったそうです。表にヘッドスパなんてメニュー出さなければ良いのにねと。

 そこで、翌日の朝礼で全員の爪をチェックしたら、いましたうちにも一人。「あの子だけにはシャンプーを当てないでと、お客さまから逆指名があった子が」その訳が分かったそうです。それから、サロンでは爪は指頭より伸ばさないことを徹底しています。外へ出ると勉強の材料はたくさんあります。

 お客さまの幸せ、喜びがサロンのテーマになっていて、スタッフたちも一丸となって取り組んでいる姿がよく見えます。ここのオーナーのもう一つの願いはスタッフの幸せ、喜びにあることです。

 ここの従業員は週休2日・8時間労働で社会保険(厚生年金と健康保険)、雇用保険、労災保険が完備されています。従業員の勉強会は毎日開店前の2時間。

 全員で朝食を済ませ、お客さまのお迎えの準備が済むと、年間計画の自分のテーマに沿って勉強する。教わった勉強の事例は、開店と同時に客さまがみえ、その日のうちに活かされますから、従業員の育ちが早い。オーナーは「早起きは三文の得ですね。みんな若いのによく早く出てきます。その代わり夜は6時前後に終わりますから」と笑っておられました。

 「スタッフに言うんですよ。早く帰ってゴールデンタイムのテレビを見たり、雑誌や本を読んだり、自分のために料理を作ったりしろと。お客さまと同じ目線で生活しないと、世の中に置いていかれるからね。美容師は何も知らないと言われたらお終いだとよく言うんですよ。そういえばスタッフは月に1回だけ私と2時間デートするんですよ。個人面談というんでしょうか、個人的な悩みや、今したいこと、勉強会の進行状況、情報など何でも相談に乗ります。私は聞くだけだけど、皆楽しみにしているみたいです」
 繁盛店のオーナーは人としての魅力もあるようです。

文/菊島延佶(オフィス キクシマ)

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