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技術も接客もお客さま目線でもう一度見直す時期になりました

 最近各地のカルチャーセンターで人気のある教室は子どものヘアスタイル教室。簡単ヘアカット、簡単ヘアアレンジ、プロが教えるヘアカットなど2時間で3〜6回コースだそうです。フェイシャルからメイク、ネイル、ヘッドマッサージまであります。新聞の募集広告をじっくりご覧になったら、その数の多さに驚くことと思います。

 あるカット教室でのことです。ホンのちょっとの間見学させていただいたのですが大変勉強になりました。講師が「皆さん。あなた方はヘアスタイルでどこが気になりますか。そこの奥さんあなたはいかがですか?」「前髪の方かしら」「そこのお嬢さん、あなたは?」「前髪と横の長さかしら」。

 「そうです。前髪ですよ。カットも前髪から切るのですよ。美容室に行って切られすぎた経験がある方はおられますか?」「ハイ!切られすぎて戻すのに3カ月もかかってしまって」。「そうです。美容師は後ろから切る人が多いんですよ。だから、前の方が分からなくなっちゃう(笑)。昔の美容師さんは前から切っていたのですが、イギリスの何とかさんという方のカット方式にカブレて自分たちだけの世界に入ってカットしますから、とんでもない髪型にしてしまうのです。前髪からカットして横、後ろと切れば10分もあれば誰でも切れます。それからハサミはこの削ぎバサミ(セニングシザーズ)でやりますから、切りすぎて髪の毛が無くなっちゃうことはありませんよ。(笑)最後の仕上げにこの普通のハサミ(シザーズ)を使います。安心してカットしてください」。

 この時、業界誌・紙で読んだカットの不満が5割以上という原因が分かった気がしました。この後私は追い出されましたので実習は見ていませんが、2時間・3〜6回の講座で自分のヘアと子どものヘア、旦那さんのヘアのカット入門ができることがつかめました。後は回数を多く切ることです。

カットはフロントから決める、お客の限界は15分以内

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ある業界のベテランの先生が行っているカット教室では、何10年も前からフロントのラインを決めるのが一番先、次にサイドのライン、そしてバックです。お客さま目線のカットが大事と生徒は教えられます。いかにお客さまに似あうカットができるかで、美容師の価値が決まると…。

 全員が15分位でカットを終えます。これもお客さまの我慢の限界は15分だと教えられるからです。最新流行のヘアデザイン画や写真の提示があり、そのヘアスタイルを採り入れ似あうヘアにするには、どこをどう切るか分解図に描かれています。ところがあるカット教室を見学したときに、黒板に講師の作品が1枚展示されているだけで、先ずブロッキングして、後ろからカットしていました。その作品になるように切るだけです。フロントは何cm、サイドは何cm、バック何cmというだけです。これでウイッグを切るだけでヘアデザインの作り方は分かりません。しかも時間は無制限。

 一度素人さん向けの教室を受講されてはいかがでしょうか。美容室のお客さまになって当然の方たちがこの教室に通っています。何を期待して受けているのか受講者の声が聞けると思います。参加することで、美容室からお客さまがなぜ離れていくかが分かると思います。お客さまの目線と美容師の目線が違うことが理解できれば勉強になると思います。

 ある繁盛美容室はお客さまとのヒアリング(傾聴)を徹底して訓練しています。その起源はお客さまの怒声から始まりました。カットが終わってブローに入るときに「私の言った通りにしてくれてないじゃないの。できなければできないと言ってよ。ここを切りすぎたら嫌と言ったでしょう。何を聞いていたの!」と怒っています。いつもはニコニコしている常連さんです。どうやらバングを切りすぎてしまったようです。技術者はベテラン。まさかの失敗です。彼女は「無意識に切ってしまいました」と謝りました。経営者が中に入ってなんとかなだめて収まりましたが、普通はこのようなミスをすると黙って来なくなるお客さまが多い中で、はっきりとおっしゃっていただき、感謝したそうです。

 この美容室の経営者の偉いところは、このミスを2度と起こさないようにすることを徹底させようとしたことです。そこで、ヒアリング会話集を作って、お客さま目線でご希望をうかがうことを徹底させました。必ずメモをしながらお客さまの声を吸い上げ、それを復唱すること、確認をとることを全員に教育しました。カット、パーマ、カラーの全てのメニューに至ります。しかも、技術もお客さま目線で見て気になるポイントから施術するよう再教育しました。お客さまの一番気になるところを最初に解決すること、これが商売の鉄則です。

ご不満、お困り、お悩みを傾聴、施術中にも確認を忘れずに

例えばカットのヒアリングですが、ヒアリングカード(カルテに追加する情報)に月日と当日のメニュー名、ご不満、お困り、お悩みとその解決策の記入欄があります。

1/ご不満をうかがう。「前にカットされた時に、何かご不満とか、お困りに なられたことはございませんか?」「前髪はいかがですか?」「輪郭はい かがですか?」「後ろは始末しやすい ですか?」。
 ヒアリングを始めた当時は、お客さまは驚いたような顔をしたそうです。今でも新規のお客さまは驚くそうです。でも、本音で不満を語り始めてくれるといいます。

2/全部メモをとる。鏡の横に丸椅子を置いて、お客さまの目の前でメモをとります。お客さまも覗き込んで、ご 覧になっているそうです。必要があれば写真やデッサン画でスタイルの確認をとります。

3/メモをとりながら復唱する。「○○と○○はいつも気になっておられるところですね。そこをカバーします」 「○○は切りすぎないように、この長さにすればよろしいのですね」「分かりました。ご希望に添えるようにカットいたします」。

4/施術に入ってからも、「ここは、先ほどのご希望のようにカットいたします」「ここは○○します」と必ず確認をとります。

5/「ご希望のようにカットいたしましたが、何かお気づきのことはございませんか」と、カットが終わってから、再度ご不満、お困りをチェックします。その頃はお客さまの顔色が「満足」で輝いているそうです。ここで、必要があればこのカットを長持ちさせるためのパーマ(ロッド5〜6本・時間20分)を次回にされるようにお勧めするとか…。「次回に○○」が、なかなか評判が良いそうです。

 このヒアリングを行ってから、お客さまは施術中に雑誌を見たり、本を読む方がいなくなりました。施術中は鏡の中でのお客さまと技術者が一体となってヘアスタイルを創っています。この方式が徹底できるまで1年間かかったそうです。

美容師は、お客さまの代わりにカットやパーマ、カラーを施術しているのです。お客さまの代わりだという意識が薄れますと、お客さまは黙って来店しなくなります。技術も接客もお客さま目線で考え、再度見直す時期です。

文/菊島延佶(オフィス キクシマ)

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