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国家試験、美容学校を変えないと美容界に危機がやってきます

 昭和38年にテルミー美容専門学校に入学し、翌年インターン。昭和40年に美容師資格を取り、それから美容界一筋で生かされてきました。今があるのは美容界のお陰だと感謝しております。当時の美容学校はすでに廃校になり、今そこには「劇団ひまわり」の建物があります。

 美容師を志した当時、たしか1月も半ばの頃のことでした。入学願書を出したときに「あなた。学校は相モデルで技術を勉強するから、入学までに髪を伸ばしなさい。それができないと高いモデルウイッグを何台も買うはめになるのよ」と言われました。

以前の学校は相モデルが基本痛さを知った昔の美容教育

そんなわけですから、フィンガーウエーブやワインディングなどの初期の技術をモデルウイッグで習うと、相モデルでの実習が待っていました。ロッドで髪を引っ張られる痛さや、1剤、2剤が流れてくる気持ちの悪さ、カットの際にガリガリ梳かれるコームの痛さ、毛染でオールパーパスにされて、粗ぐしで梳かれる痛さなど、何をやられたら嫌かということを、思いっきり知らされました。

 美容の技術に心がなかったら、相手に不快感を与えるもの。よい技術者はそれを知っていて、相手が痛くない方法でやるのだな。自分は早くそれを身につけようと思ったものです。

 頭髪化粧品のインストラクターをしていた頃、10数校の美容学校に毛染やパーマ実習の手伝いに行きました。午前中は基本の化学理論と技術理論を1時間くらい勉強し、後はウイッグで染毛剤塗布の練習や、ワインディングの練習。午後は相モデルでの実習です。

 してはいけない技術をやるとどうなるか。選んではいけない明度のカラー剤を選ぶとどうなるか。パーマでは巻いてはいけないといわれた所にロッドを巻くとどうなるか。ロッドが必要な部分はどこか…など。

 染め上がりや、かけ上がりの作品を全員の前で発表させ、良い点、悪い点を指摘しあい、皆の勉強材料にしました。1時間の理論では眠っていた生徒も技術になると頑張っていました。でも理論で学んだことが実技に出ますから、眠っていたダメな生徒はダメ。後悔先に立たずです。私が教師なら「学校辞めろ」と言っていたでしょう。

ゆとり・無責任教育のツケが専門学校まで先送りされ

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 今でも学校とお付き合いがあり、そこの教師の方の話しをお聴きするのですが、その努力は半端なものではありません。ゆとり教育の結果が、そのまま専門学校にも波及しているのですから。小・中・高の無責任教育の結果、あいさつもろくにできない子どももいます。漢字は知らない、言葉づかいは知らない、教師を教師とも思っていないような連中に美容を教える(しつけるという方がよいかも知れません)のです。親や義務教育の際に教師が当然しつけておかなければいけない、あいさつや返事、片づけなどの生活習慣まで先送りにされているのですから。

 親と面談すれば、流行のモンスターペアレントですから「金を払っているのだから、お前らがやって当然だ」と言うそうです。

サロンの実情に沿わない国家試験の課題、学校教育

 それはさておいて、懸命に指導している教師の方々にも解決できない問題があります。それは、この時代遅れの国家試験の内容を変えないと、美容学校を出てから、美容室に勤務してすぐに仕事に就くことができないという現実に、生徒をぶつけてしまっていることです。

 ヒットして40数年を過ぎた時代遅れのカット(2010年夏の試験まではグラデーションボブ、それ以降はレイヤーカットになるとはいえ)それもウイッグを使用して。たくさんのロッドを巻くワインディングはパーマ音痴を作るだけです。他の課題も聞くだけで寒気がします。

 私たちの頃の資格試験の課題はフィンガーウエーブとピンカールでした。当たり前のことですが、お客さまへのメニューでもあり、需要もありました。ですから、美容室に入ってすぐに役に立ったのです。

 今の国家試験の内容と、それに受からさなければいけないという、教師の使命感が、美容学校の教育をおかしくしています。だから、美容学校と生徒を受け入れた美容室の乖離が大きくなってきています。

 今の試験問題は、どこの部署の、誰が、どんな目的で、どんな方法で決めているのでしょう。その方たちは美容室の実情をご存知なのでしょうか。
 また、試験官の方たちは、何の疑問もなく試験に立ちあっているのでしょうか。改善の声はないのでしょうか。

 うがった見方をすれば、どうもトップは天下り官僚の温床の臭いがします。「業界のことはどうでもいい」「昔、法律で決まったから」「昔からの習慣だから」では、社会から置いていかれるだけです。ここにも、本当の意味での事業仕分けが必要なようです。

実習でヘアカットを教えるカルチャーセンターは盛況

 ところで、私の手元に、カルチャーセンターで使われている「家中みんなの簡単カット・10分でできる部分カットから髪型キープのトータルカットまで」というテキストがあります。

 それに、4枚刃のレザーがついたヘアカットブラシ(思いのほか上手にカットできると表示してある)、梳きバサミ、カットハサミ、コームがセットされています。

 全国のカルチャーセンターで美容師が「家でできる簡単ヘアカット教室」や「簡単ヘアアレンジ教室」を開いています。私の住んでいる地区でもこれらの教室は盛況です。短時間の授業で、全て実習で自分の髪を切ったり、友人と髪を切りあっています。

気の毒にすらなる2年間の教師と生徒の苦労

 学校で2年間もウイッグを切り、巻き、カールを作り、受験資格も取り卒業。国家試験に無事合格し、美容室に入ってからまたやり直しでは、2年間は何だったのでしょうか。教師の苦労はどこにいったのでしょうか。生徒も教師も気の毒になります。

 そして、国家資格を取得しても半分の生徒は美容室に入らず、1年たつと、さらに半分以上が美容室から消えていく。なんとも空しくなります。
 このままいけば、美容師のなり手はますます減り、美容室も減少し、自分でカットするお客さまが増え、美容業界全体が衰微するでしょう。

 関係者各位にお願いします。ぜひ、国家試験と学校教育を改善して、美容室に入ったら、早く役に立てる人づくりを目指してください。この不況のデフレ社会では、美容室も新たな人たちを育成するお金も時間もなくなるでしょう。お客さまの美容室離れはどんどん進行していますから。

文/菊島延佶(オフィス キクシマ)

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