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3年間で美容室が消えてゆきました

 先日のことです。日課の散歩で少し遠出をして、前にアドバイスにうかがったことのある美容室の前を通りかかりましたら、すでに美容室はなく、衣類や雑貨を売るショップに変わっていました。あっけない美容室の消滅に、しばしぼう然としました。

 あれは2年も前のことでした。あるディーラーの社長に同行して、その美容室にうかがいました。社長の話では、「開店してから半年たって、急激に売上が下がってきたので、何とかならないか」ということでした。経営者は若い真面目な方で、元カリスマ美容師といわれた方のサロンに10年間勤務していたそうです。

 床面積は約12坪、スタッフ4人、鏡は5面、シャンプーブース2台。どこにでもある普通の美容室です。そんな事前の知識で経営者にお会いしました。

お客のいないサロンに入るとツーンとタバコの臭い

 夕方のことで、通りに面した美容室にはお客さまが結構入っていましたが、そのサロンにお客さまの姿はありません。サロンに入るとツーンとタバコの臭いがしました。筆者はタバコが大嫌いですから、これからの面会も何となく憂うつになりました。

男性は無精ヒゲに帽子を被り、女性はヘソ出しでケバイ化粧

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 働いていたのは男性3人、女性2人です。男性3人は皆帽子を被って無精ヒゲを生やしています。汚いジーパンをはき、冬なのにTシャツ。女性の1人は胸までの長い髪にヘソだしルック。もう1人は擦り切れたジーパンに、ヨレヨレのTシャツで狸がアカンべーしたようなケバイ化粧。ヒゲ男の1人がオーナーでした。

 彼の話では、かつて働いていたサロンで指名客がたくさんいたので、経営者の勧めで独立開店。4人のスタッフは元は部下だったそうです。オープン当初は忙しい毎日だったようですが、半年たった頃から、お客さまが激減してきたそうです。

 「その理由として何か気付いたことはありませんか」の問に、「それが分かれば手を打っていますよ」「気付いたことがあったら何でも言って下さい」とのことで、いくつか質問をしました。
 その質問と回答は次の通りです。

−売り物は何だと思いますか。特に自信があるメニューは何ですか。
 「カットだと思います」

—お客さまの不満が多いのもカットですが、よく希望をうかがっていますか。
 「別に普通だと思うな」

—スタッフさんたちは、何をしたらお客さまが増えると言っておられますか。
 「『ホットペッパーに広告を出して割引券を配ったら?』と言っていますが、自分の友達に聞くと、『広告代と同じくらいの客しか来ないからよせ』と言われているんです。だから、いまだに決めかねています」

—前に勤めていたサロンの経営者さんは禁煙、制服着用、ヒゲは剃る、化粧はナチュラル、帽子は被ってはいけない、言葉づかいは決まりがある等、接客技術はうるさく指導していると、講演されているのをうかがったことがあります。そうではありませんか。
 「その通りです。それが嫌で自分が店を持ったら自由な格好で働き、仕事に熱中できればよいと思って…。そんな夢を語って部下だった皆(スタッフ)と一緒に始めたのです

独立に付いてきたお客さま、その期待を裏切る展開に

—元の経営者さんは厄介払いができたと思っているでしょうね。
 「えっ。何ですそれ!」

それを元に戻す気はありませんか。多分あなたに付いてきたお客さまは、それを期待していたのに裏切られたと思っていると思いますよ。奥の部屋から漏れてくるタバコの臭いは、がまんできないくらい不快ですよ。
 「えっ! 全然感じていないけど、臭いますか。自分とスタッフ全員がタバコを吸いますが、気が付かなかったなぁ。禁煙ねえ」

—ヘアスタイルを売る商売なのに、なんで帽子を被るんですか。
 「格好良いと思っているけど、いけませんか

—部屋の中では昔のカウボーイだって帽子は脱ぎますし、お客さまに失礼だと思いますが、そう思いませんか。
   「別に…」

—彼女たちは爪を伸ばして派手なネイルをしていますが、シャンプーやカットのすすぎを嫌がるお客さまはいませんか。
 「私のお客さまは、私にしてくれと言いますが、彼女たちにもやってもらっていますよ。確かに前に勤めていたサロンは爪を指頭で切れと言われました。彼女たちもそれが嫌でついてきました。だってオシャレでしょう」

オシャレと見るか、プロじゃないと見るかはお客さまの判断ですね。お客さまにどうして来店されなくなったったか、声を聞いたことはありますか。
 「まったくありません」

—それを知りたくありませんか。自分たちはこうしたかったので、今の姿ですが、何かお気付きの点がありましたら教えて下さい。技術や応対にご不満がないかお聞かせ下さい。お客さまの声をうかがう往復ハガキは必要だと思いますよ。お客さまにも選ぶ権利がありますから。リピーターが減った原因はそんなところにあるかも知れませんね。
 「不景気のせいじゃないんですか」

—それはないですね。ところで、料金表が見当たりませんが、新規のお客さまは不要なのですか。
 「そんなことはありません。前のサロンでも無かったものですから。ただ、フロントのテーブルの上には置いてありますよ。必要なのでしょうかね。確かに新規の人には分からないですね」

—入口のウインドーを触ったらザラザラしていましたが、いつウインドーを洗いましたか。床も1年目にしては汚れていますね。
 「月に1回大掃除をしますからその時かな。えっ! 毎日洗うんですか」

表から見ても…消える美容室と繁盛店は真逆

 こんな質問を1時間半繰り返した覚えがあります。こうしたサロンは、早いところでは2カ月から半年位で消えてしまいます。表から見て共通しているのは、帽子を被って無精ヒゲの男性美容師。腰にはシザーケースを着けています。それに髪を長くした女性美容師。しかもロングドレス風のヒラヒラした服装。キンキラした長い爪、素足にサンダル。ご自分たちは格好良いと思っているのでしょうね。

 繁盛店にうかがうと、きちっとした制服、短くカットされた髪、流行のヘアスタイル。女性もナチュラルメイクで好感度100%です。言葉づかいや応対は礼儀正しく、お客さまのご希望に真摯な態度で臨みます。施術時間も短く、設備も良く全体が引き締まっています。

 お客さまに支持されるようなサロン創りに挑戦して欲しいと思うばかりです。

文/菊島延佶(オフィス キクシマ)

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